もう感情的に怒らない!生徒の心に響く教室での「叱り方」メソッド

「生徒さんの良くない行動、どう注意すれば伝わるんだろう…」「つい感情的に怒ってしまって自己嫌悪…」
子供向け教室の先生にとって、「叱る」という行為は、とてもデリケートで難しい問題ですよね。
近年「叱らない方が良い」という風潮もありますが、社会のルールや望ましい行動を教え、生徒さんの成長を促すためには、適切な「叱り方(注意・指導)」が必要な場面も確かにあるはずです。

大切なのは、先生自身の感情をぶつける「怒り」ではなく、生徒さんの成長を願う愛情に基づいた「教育的な叱り」を意識することです。
この記事では、「怒る」と「叱る」の違いを明確にした上で、生徒さんの心に届き、前向きな行動の変化を促すための具体的な伝え方のコツを、教室の場面に合わせてご紹介します。

1. 「叱る」と「怒る」は違う!先生が心得るべき大前提

まず最初に、非常に重要な「叱る」と「怒る」の違いを確認しましょう。この二つを混同してしまうと、本来の目的を見失いがちです。

怒る 叱る (注意・指導)
目的 自分の感情を発散させることが主。
イライラや不満を相手にぶつける。
相手の成長を願うことが主。
望ましい行動を教え、改善を促す。(教育的意図)
状態 感情的(イライラ、カッとなる)。
声が大きくなりがち。
冷静。
相手に伝わるように、意図を持って話す。
焦点 自分の感情、相手への不満。 相手の行動、今後の改善点。

教室で生徒さんに関わる際、イライラしてしまう瞬間もあるかもしれません。しかし、その感情をそのままぶつけるのではなく、「この子の成長のために、今何を伝えるべきか」という教育的な視点を持つことが、「叱る」の第一歩です。

【「叱る」と「怒る」の違い】
「怒る」のは自分の感情発散、「叱る」のは相手の成長を願う教育的指導です。
まずはこの違いを意識し、冷静に、意図を持って関わることを目指しましょう。

2. なぜ「叱る(注意・指導)」ことが大切?生徒の成長に必要な理由

「叱らない方が良いのでは?」と感じるかもしれませんが、生徒さんの成長のためには、適切に「叱る(注意・指導する)」ことが必要な場面もあります。その重要性を見てみましょう。

  • 社会性やルールを教えるため
    教室という小さな社会の中で、何が良くて何が良くないのか、守るべきルールがあることを教えるのは大人の役割です。適切な注意は、社会性を育む上で不可欠です。
  • 望ましくない行動を修正するため
    危険な行動や、他の生徒さんに迷惑をかける行動などは、それがなぜ良くないのかを伝え、正しい行動を教える必要があります。繰り返さないための大切な指導です。
  • 責任感や自制心を育むため
    自分の行動の結果として注意を受ける経験は、自分の行動に責任を持つことや、感情や衝動をコントロールすることを学ぶきっかけになります。
  • 愛情や真剣さを伝えるため(信頼関係)
    時には厳しい注意も、「自分のことを真剣に考えてくれている」という先生の愛情の表れとして生徒さんに伝わることがあります。毅然とした態度が信頼に繋がることもあります。

もちろん、叱る必要がないように、日頃から良い行動を認めたり、環境を整えたりする工夫は大切です。しかし、必要な場面で適切に伝えるべきことを伝える勇気も、指導者には求められます。

【「叱る」ことの重要性】
適切な注意・指導は、生徒さんの社会性・ルール理解、行動修正、責任感・自制心を育み、時には先生との信頼関係を深めるためにも必要です。

3. 【実践テクニック①】冷静に、具体的に伝える基本の型

感情的にならず、生徒さんの気持ちにも配慮しながら、伝えるべきことをしっかり伝えるための基本的な型をご紹介します。

  • 気持ちに寄り添い、伝える(スリーステップ)
    生徒さんの気持ちを理解・共感しつつ、良くない行動とその理由を伝える方法です。生徒さんの心を開き、メッセージを受け入れやすくします。
    【教室での例:忘れ物を繰り返す生徒さんへ】
    1. 「また忘れちゃったんだね。」(事実確認)
    2. 「うっかりしちゃうこと、先生にもあるよ。」(共感)
    3. 「でも、忘れ物があるとレッスンで困ることがあるから、次からは前の日に準備しておけるといいね。」(伝えるべきこと)
  • 事実→影響→望ましい行動 を伝える(EEC)
    具体的な「事実(行動)」、それがもたらす「影響」、そして「望ましい行動」を順に伝えることで、生徒さんが状況を理解し、次にどうすれば良いかを考えやすくします。
    【教室での例:レッスン中に騒いでいる生徒さんへ】
    「今、〇〇くんが大きな声でお話ししているね(事実)。そうすると、周りのみんなが先生の話を聞き取りにくくなってしまうんだ(影響)。今は、少し静かに先生の話を聞いてくれるかな?(望ましい行動)」
  • 理由を伝え、納得を促す
    頭ごなしに「ダメ!」と言うのではなく、「なぜダメなのか」理由をきちんと説明し、生徒さん自身にも考えさせることで、納得感を促し、行動の改善に繋げます。
    【教室での例:順番を守れない生徒さんへ】
    「今は〇〇ちゃんの番だから、順番を守ろうね(指示)。みんなが順番を守らないと、楽しく遊べなくなっちゃうからだよ(理由)。どうして順番を守ることが大切か、わかるかな?(問いかけ)」
【基本の伝え方】
生徒さんの気持ちに寄り添いつつ、「事実→影響→望ましい行動」を伝えたり、理由を説明して納得を促したりする型を意識しましょう。

4. 【実践テクニック集②】生徒さんの心に届ける伝え方の工夫

伝え方を少し工夫することで、生徒さんが注意を受け入れやすくなったり、自分で考えるきっかけになったりします。

  • 「先生は」を主語にして伝える(私言葉/アイメッセージ)
    「(あなたは)〇〇しなさい!」という主語が相手(You)のメッセージではなく、「(私は)〇〇してくれると嬉しいな/助かるな」のように、主語を先生自身(I)にして伝えることで、要求が柔らかくなり、生徒さんも受け止めやすくなります。
    【教室での言い換え例】
    「騒がないで!」 → 「(私は)みんなにしっかり聞いてほしいから、少し静かにしてくれると嬉しいな。」
    「片付けなさい!」 → 「時間だから、(私は)そろそろお片付けしてくれると助かるな。」
  • 「~しないで」より「こうしよう」で伝える(肯定的な指示)
    「〇〇しないで」という否定的な指示(Don't)は、具体的にどうすれば良いか分かりにくいことがあります。代わりに「〇〇しよう」という肯定的な行動(Do)で伝えることで、生徒さんは次に取るべき行動を理解しやすくなります。
    【教室での言い換え例】
    「廊下は走らないで」 → 「廊下は歩こうね。」
    「道具を投げないで」 → 「道具はそっと置こうね。」
  • 「どうしようか?」と一緒に考える
    生徒さんがルールを守れなかったり、わがままを言ったりした時に、頭ごなしに叱るのではなく、「困ったね、どうしようか?」と問いかけ、一緒に解決策を考える姿勢を見せる方法です。生徒さんは信頼されていると感じ、自分で考える力が育ちます。
    【教室での例】
    (おもちゃの取り合いでケンカになった時)「二人とも使いたかったんだね。でも一つしかないから困ったね。どうしたら二人とも気持ちよく使えるかな?
【心に届ける工夫】
「私」を主語にする、肯定的な指示、「どうしようか?」と問いかける、といった工夫で、生徒さんの納得感と主体的な行動を引き出します。

5. 【実践テクニック集③】前向きな変化を促す視点

叱った後のフォローや、視点を変える言葉かけで、生徒さんの前向きな変化をサポートしましょう。

  • 叱った後の「フォロー」を忘れずに
    注意した行動が改善されたら、「ちゃんと直せたね!」「意識してくれて嬉しいよ」と、変化をしっかり認め、伝えることが大切です。「叱りっぱなし」にせずフォローすることで、生徒さんは成長を実感できます。
  • 「代替案」を示して行動を導く
    「〇〇はダメ」と禁止するだけでなく、「代わりに〇〇しようか」「ここではダメだけど、〇〇ならいいよ」と、具体的にどうすれば良いのか代替案を示すことで、生徒さんは納得しやすく、適切な行動を学びやすくなります。
  • 過去の失敗より「未来」に目を向ける
    「なんでそんなことしたの!」と過去を責めるのではなく、「次はどうしたらうまくいくかな?」「これからどうしていきたい?」と、未来の行動や改善策に焦点を当てた問いかけをすることで、生徒さんは前向きに考え、失敗から学ぶことができます。
【前向きな変化を促すアプローチ】
叱った後のフォロー、代替案の提示、未来への問いかけなどを活用し、生徒さんの自律的な成長をサポートしましょう。

6. 叱り効果を高める!言葉以外の要素も意識しよう

どんなに適切な言葉を選んでも、伝え方によっては効果が半減してしまうことも。タイミングや表情、声のトーンなど、言葉以外の要素も意識することで、注意や指導がより効果的に伝わります。

叱る「タイミング」

基本的には問題行動が起きたその場、あるいは直後に伝えるのが効果的です。ただし、人前で叱ると生徒さんの自尊心を傷つける場合もあるため、状況によっては、レッスン後などに個別に時間を取る方が良い場合もあります。また、カッとなった時は、一呼吸置いて先生自身が冷静になってから伝えることも大切です。

「伝え方」(目線・表情・声)

  • 目線
    基本的には相手の目を見て真剣に伝えることが大切ですが、生徒さんによっては威圧的に感じることも。状況に応じて、少し目線を外したり、同じ方向を見ながら諭すように話したりする工夫も。
  • 表情
    ただ怖い顔をするのではなく、真剣な表情で「それは良くないことだ」と伝えたり、時には悲しい表情で「先生は悲しいな」と伝えたりするなど、言葉と表情を一致させます。
  • 声のトーンと大きさ
    感情的に怒鳴るのはNG。落ち着いた、しかし毅然としたトーンで話すのが基本です。危険な状況など、行動をすぐに止めさせたい場合は、一時的に大きな声を使うこともありますが、その後は冷静に話しましょう。時には「沈黙」が自分の行動を振り返らせるきっかけになることもあります。

大切なのは、言葉と非言語的なメッセージ(態度、表情、声など)を一致させ、先生の真剣な思いや愛情が生徒さんに伝わるように意識することです。

【叱り効果を高める要素】
叱るタイミング(基本は直後、時に個別で)、伝え方(目線、真剣な表情、冷静な声)を意識し、言葉と態度を一致させることで、指導の効果を高めます。

7. まとめ:「叱り上手」は「育て上手」への第一歩

生徒さんの成長のために「叱る(注意・指導する)」ことは、教室の先生にとって避けては通れない、しかし非常に重要な役割です。
大切なのは、感情的な「怒り」ではなく、生徒さんへの愛情と成長への願いに基づいた「教育的な叱り」を意識し、そのスキルを磨いていくことです。

この記事でご紹介した様々な伝え方のコツは、あくまでヒントです。一番大切なのは、目の前の生徒さん一人ひとりとしっかり向き合い、その子の個性や状況に合わせて、心を込めて関わることです。
「叱り方」を学ぶことは、「生徒さんをより深く理解し、より良く育てる方法」を学ぶことに他なりません。

先生方の「叱り上手」への努力が、生徒さんとのより良い信頼関係を築き、教室全体の健やかな成長に繋がることを心から願っています。

関連記事

前の記事へ

生徒が辞めない子供向け教室の秘密とは?今日からできる3つの工夫

次の記事へ

【初心者向け】教室のオンラインレッスン導入ガイド|準備から集客まで徹底解説